研究概要 |
イオン液体の伝導性の向上にはイオン液体の粘性ではなく,分子の大きさを大きくすることにより,イオン間相互作用を抑制することで,より速いLi+やNa+の動きを達成できるのではないかと考え、化合物の合成とその電気化学的検討を進めた. まず[bmim]TFPBを合成した.1-メチルイミダゾールに1-プロモブタンを反応させ,臭化ブチルメチルイミダゾリウム([bmim]Br)を合成した.また,3,5-ビス(トリフルオロメチル)プロモベンゼンをマグネシウム存在下,テトラフルオロホウ酸ナトリウムと反応させ,テトラキス(3.5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸ナトリウムを合成した.これからさらに塩交換を行い,目的物を得た. 次に新規物質である[bmim]TPFPBの合成も検討した.まず,プロモペンタフルオロベンゼンにn-ブチルリチウムを反応させ,引き続き三塩化ホウ素を作用させ,トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを合成,単離した.これにペンタフルオロフェニルリチウムを反応させ,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸リチウム(LiTPFPB)を合成した.得られたもの更に反応させて塩交換を行い,目的物である[bmim]TPFPBを合成した.さらに,bmimをカチオン,高配位ケイ素化合物をアニオンにもつ嵩高いイオン液体の合成も検討した. [bmim]TFPBは既知物質ではあるが,電気化学的測定はほとんどされていない.そこで,NaTFPB/[bmim]TFPB:0.3mol/kgを調製し,セラミックスマトリックス複合材料の電気伝導率測定(5Hz〜5MHzの領域で交流2端子法)を行ったところ,200℃で5.86×10^-4Scm^-1という結果となった.[bmim]TPFPBに関しては,電位窓などの電気化学的測定を検討したが,再現性のある結果が得られなかった. このような検討の結果、まだ完璧ではなく更なる発電の検討が必要であるが、イオン液体を用いた複合材料で固体電解質の代わりになりうるものがあること、また、ケイ素などを含む全く新しいイオン液体を合成できうることが示された。
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