研究概要 |
イオン液体は,室温で液体である不思議な塩であり,様々な角度からその機能・有用性を明らかにすべく研究が行われている。本研究は,イオン液体と液晶の機能を併せ持つ,未来型を思考した高付加価値型の液晶材料となる分子を簡便に合成する手法を確立し,その分子の諸特性を明らかにすることを目的とする。また,次世代を担う児童生徒に,彼らにとって全く未知の化合物であるイオン液体についてわかりやすい実験授業を提案することで広くイオン液体の良さを周知したいと考えこの研究に着手した。 1.液晶分子合成を目指した光学活性フツ素化合物の合成研究 キラル部位を有する優れた液晶の研究開発が活発になされ,トリフルオロメチル基を有する2量体型の液晶材料は反強誘電性液晶のキラルドーパントとして優れていることが楠本らによって報告されている。^<1)>分子の中間に芳香族官能基を持つ新しいタイプの2量体型液晶材料へ変換可能なビストリフルオロメチルアルカンジオールの合成を検討した。その結果,イオン液体にBminPF_6を用いることで,反応速度,エナンチオ選択性共に十分な値を得ることが出来,イオン液体の有用性を生かした結果が得られたものと考えている。 2.イオン液体を活用した環境に優しい教材開発 イオン液体は室温で液体である不思議な塩であり,難燃性で,揮発性がなく,毒性のない優れた溶媒である。イオン液体を用いて高等学校教材に活用できるエステル化反応について検討した。その結果,溶媒にBminTFSI,触媒として従来用いていた濃硫酸ではなく,固体酸を用いて簡便に行う方法を見いだした。 本年度は,実際に地元の高等学校に行き出張授業,現職の教員を対象に研修事業を2回行った。出張授業ではそれぞれ従来の物質とは異なる性質を確かめ,今までにない新しい物質の魅力を見出すとともに,科学の面白さを再認識していたと思われる。研修事業では生徒が体験するのと同じ演習形式で実際に測定・実験を行ったが授業展開のヒントになったものと思われる。
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