研究概要 |
本年度は,当初の研究計画に基づいて,イオン液体/水界面を利用するたんぱく質マイクロカプセルの作製について検討した.疎水性イオン液体(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド,bmim TFSI)中に牛血清アルブミン(BSA)の水溶液を加えると, BSAがイオン液体/水界面に吸着し,安定なマイクロ水滴(エマルション)が形成された.グルタルアルデヒドによりBSAを架橋した後,エタノールアミン水溶液を加えると,BSAマイクロカプセルを一段階で水中に抽出できることがわかった.また,人血清アルブミン(HAS),ラクトグロブリン(LGB),チトクロムcを用いた場合においても,同様にマイクロカプセルが得られ,本手法の一般性が確認された.また,たんぱく質水溶液の濃度を変えるだけで,マイクロカプセルのサイズを制御できることがわかった. BSAやLGBマイクロカプセルについて,フルオレセインを用いて透過特性を検討した.その結果,フルオレセインは,これらのカプセル壁を容易に透過できることがわかった.また,DNAとBSAの混合水溶液を用いることによって,容易にDNAを内包したBSAカプセルが得られることを見出した.さらに,西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)の内包について検討したところ, HRPはその酵素活性を維持した状態で,BSAカプセルに内包できることが明らかとなった.このように,イオン液体/水界面を利用することによって,たんぱく質マイクロカプセルを作製し,その物質透過性や内包特性に関する基礎的な知見を得ることができた.
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