研究概要 |
酵素は,特異な三次元構造を有するときにのみ活性を有する。溶媒が水以外のものであれば三次元構造は徴妙に変化するので,酵素の反応性や選択性は重大な影響を受ける。我々は酵素に変異を導入すると同時に,様々なイオン液体の影響を調べてきた。イオン液体は陽イオン,負イオンからなるので,タンパク質の立体配座に与える影響は大きいと予想できる。また,変異の種類による影響を調べれば,酵素の全体的な構造を変えることなく,ピンポイントの変化を分子レベルで観察できると期待した。 酵素としては,以前に我々が好熱性古細菌から単離精製した耐熱性エステラーゼを用い,フェニルアルカノールのアシルイヒを検討した。コンピュータモデリングの結果、活性部位付近にはLeu83, Try89, Phe197, Leu198, His202, Gly274等があり,基質の置換基と相互作用すると予想できた。そこで,これらのアミノ酸残基に変異を導入し,いくつかのイオン液体中で反応性エナンチオ選択性を検討した。また,イオン液体であらかじめ処理した酵素に関しても野生型酵素の活性や選択生を検討した。 イオン液体の効果を調べるために標準溶媒としてはジイソプロピルエーテルを用いた。一般的に,イオン液体中では反応性はより大きいものの,エナンチオ選択性は劣ることが多かった。しかし, Gly271Asnは例外で、フェニルアルカノールの酪酸ビニルによるアシル化で,いくつかのイオン液体中でジイソプロピルエーテル中よりはるかに高い選択性が観察された。 さらに,あらかじめ少量のイオン液体で処理した酵素を使って,アセトン中での反応を検討した。エチルメチルイミダゾリウムBF4で処理した酵素は,エナンチオ選択性を向上させる効果があった。
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