研究概要 |
本研究は,細胞と部分的に接合して得たエネルギーを駆動力とする人工細胞ネットワークの構成を目的としたものである.具体的には,1)細胞との間に物質交換チャネルを形成する膜タンパク質を提示させるリポソームを構築し,2)細胞接着因子を導入してゲル内でリポソームネットワークを固定化した構造を構築する.3)1)と2)を組み合わせることにより,リポソームネットワークが培養細胞群の表面に接着して個々にチャネルを形成し,化学物質の交換を実現する研究を順次おこなってきた.1)について,基礎的な成果を論文(J. Biotechnol. 2008)および国際会議論文(ICBP2007, MHS2007)にて発表し,さらに細胞との物質交換チャネルを形成する膜タンパク質のリポソームへの導入について論文投稿中である.2)について,細胞接着因子(ペプチド融合脂質)を導入したリポソームネットワークをゲル中にて構築し,培養細胞との相互作用確認を行った.接着因子の有無およびネットワーク形成の有無によって,ゲル表面への細胞接着能の制御が確認された(論文作成中).また,3)について,リポソームと細胞との間での親水性蛍光色素分子の交換を確認(ICBP2007)している.これらの知見より,細胞からリポソームネットワーク側に流入したATP等の小分子を利用してリポソーム内に封入された反応系の持続的な進行が実現できると考えられる.自律的に駆動する人工細胞ネットワークは,培養細胞の化学情報の直接処理および利用を可能とする新規ツールとして働くと期待出来る.
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