研究概要 |
近年新しいアクチュエータとして,生物の筋細胞を利用したバイオマイクロアクチュエータが注目されている.我々は培養筋細胞を利用したバイオマイクロアクチュエータの開発を行っている.これまでに開発してきたバイオアクチュエータの例として,ラツトの心筋細胞を駆動源とするマイクロポンプ,マウスの骨格筋マトリゲル,昆虫背脈管を利用する耐環境型バイオアクチュエータを開発してきた.しかしながら,現状の問題点として発生力が微小であるという問題がある.そこで培養筋細胞アクチュエータの高出力化のために,生体内に近い負荷のある環境を再現し,伸縮刺激により細胞を配向させたり,筋細胞への分化を促す必要がある.これまでに体内の状態に基づく様々な刺激パターンが提案されているが,実際どのような刺激が最適という実験データは少ない.そこで本研究では,複雑な様々なパターンで伸縮刺激と電気刺激を同時に負荷することができ,実験精度向上と検証時間短縮を目指したハイスループツト細胞刺激システムの開発を行った.今後は開発した装置を用いて,骨格筋細胞,心筋細胞,昆虫背脈管などについて,最適な刺激パターンの検証を行う.8台同時に異なるパターンで伸縮刺激と電気刺激を試行可能な,マルチパターン細胞刺激システムの開発を行った.これにより細胞サンプルの個体差のない正確な細胞挙動の比較検討実験を可能にした.また,細胞挙動の評価法として2D-FFTを用いた細胞配向性評価法に着目した.細胞にダメージを与えることなく行え,これまで困難であった細胞配向性の経時的な変化を定量的に評価することが可能となった.開発したマルチパターン細胞刺激システムと2D-FFTによる評価法を用いて細胞進展実験と細胞伸縮実験を行った.細胞伸縮実験では,伸展率の変化による細胞は配向性の変化を定量的に評価することに成功し,配向に適した伸展率の同定に成功した.
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