研究課題
特定領域研究
生命機能の再構成という目において、蛋白質生合成系の役割は大きい。本研究では、蛋白質へ非天然アミノ酸を導入する技術の開発を通じて、蛋白質合成の分子基盤の理解と、人工的な細胞機能の再構築を目指す。具体的には、非天然アミノ酸含有蛋白質合成系をtRNAや翻訳因子の改良により更に効率化し、無細胞系及びモデル細胞系で利用することを目的とする。本年度は、以下の項目に取り組んだ。(1)改良した合成システムによる新規な人工蛋白質の創製前年度に改変を行ったEF-Tu、及び、開発した4塩基コドン用tRNAにより、以下の(i).(ii)を試みた。(i)従来取り込み効率の低かった非天然アミノ酸の蛋白質への導入:改変EF-Tuを用いることにより これまでほとんど蛋白質へ導入できなかった1-pyrenylalanineの導入が可能になったという結果を前年度に得ている。このような例を更に数例調べ、導入効率の極めて低かった2-anthraquinonylalanineおよび1-pyrenylalanineの効率的な導入が可能になったことを明らかにした。これらの結果および前年度の結果は本年度11月にJ.Am. Chem.Soc誌に掲載された。(ii)蛋白質への複数種の非天然アミノ酸の同時導入:4塩基コドン用に開発した高性能なtRNAを用いて1つの蛋白質に複数種の非天然アミノ酸の同時導入を試みた。その結果、3種類の非天然アミノ酸の同時導入が可能になった。(2)細胞中での非天然アミノ酸含有蛋白質発現上の高効率非天然蛋白質発現系を細胞内に導入し、その中で蛍光ラベル蛋白質を合成させることを目指した。細胞としては哺乳動物細胞を用いた。現在のところ、細胞内への蛍光アミノアシルtRNAの導入法の開発途上であり、わずかながら導入できることが認められた。今後さらに導入法を最適化し、蛍光アミノアシル化tRNAが細胞内翻訳系で用いられて蛍光ラベル蛋白質の産生に結びつくことを確認したい。
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