研究概要 |
これまでに我々は、血管内皮前駆細胞(EPCs)の特異的機能を解明する目的で、細胞骨格を中心に成熟血管内皮細胞(ECs)と比較検討した。その結果、アクチンフィラメントは,EPCsにおいて不規則に配置し,所々でラメリポディアおよびフィロポディアを多く観察するのに対し,ECsではストレスファイバーが明瞭に認めらること、ライン形成においてアクチンフィラメントが垂直に直線上に配列していること、さらにビンキュリンとアクチンフィラメントの二重染色では,ECsにおいてビンキュリンを伴うストレスファイバーが観察されたが,EPCsではビンキュリンは認められず,ストレスファイバーは形成していないことを明らかにした。こうした結果は,EPCsがECsとは全く異なった細胞骨格を持つ,非常に遊走能に優れた細胞であることを示している。EPCsは、血管発生のみならず、血管修復においても重要な役割を果たしていると考えられている。一方、脂肪細胞より分泌されるアディポネクチンは、血管に直接作用して抗動脈硬化作用を発揮するとされる。我々は、EPCsにおける血管発生、血管修復の機序を明らかにするために、アディポネクチンのEPCsに対する影響を検討した。その結果、アディポネクチンはPI3K/Rac1/Cdc42の経路を介してEPCsの遊走能を有意に増加させることが明らかとなった。アディポネクチンがEPCsに直接作用することにより血管発生、血管修復に寄与している可能性が考えられた。
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