研究概要 |
知識獲得の目的は,利用者が容易に理解できる形式で高精度な知識を獲得することである.しかし,高精度な知識は,理解することが難しい複雑な知識であることが多い.逆に,単純で分かりやすい知識は,精度の点で問題があることが多い.本研究では,精度と複雑性の間でのトレードオフ分析を行うことで,様々な利用者の選好に応じた知識獲得が可能になることを明らかにした.本研究の研究成果を要約すれば以下のようになる. まず,遺伝的ルール選択と遺伝的機械学習との比較を行うことで,遺伝的ルール選択における候補ルール集合の設定の重要性を明確にした.次に,個々のルールに対する評価基準に基づいて獲得されたルール集合に関する精度と複雑性の間のトレードオフ曲線が,進化型多目的ルール選択により大きく改善されることを明確にした.また,進化型多目的ルール選択により得られた多様なルール集合を用いてアンサンブル識別器を設計する方法の性能評価を行った.さらに,アンサンブル識別器の性能評価に基づき,アンサンブル識別器の設計方法の改良を行った.具体的には,単一の識別器を表現する2進数コードを,複数の識別器を一度に表現することのできる整数値コードに拡張した.このような拡張により,複数の識別器による共通の識別ルールの使用を禁止することが可能になり,識別器の間の多様性が高まった.また,進化型多目的ルール選択における候補ルールとして,SupportとConfidenceに関するパレート最適ルールを用いるというアイディアを提案した.最後に,利用者の選好に応じた知識獲得を行うために,進化型多目的最適化アルゴリズムにおける多目的探索に,利用者の選好情報を組み込む方法を提案した.具体的には,個々の目的に関する重み,目的関数空間内での参照点,個々の目的に関する制約条件などを選好情報として組み込む方法を提案した.
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