研究概要 |
免疫沈降と質量分析によってα-klothoの結合蛋白の一つとしてNa+,K+ATPaseを見いだした。この結合は腎臓、上皮小体、脈絡膜において確認された。α-Klotho・Na+,K+ATPase複合体はER,Golgi体で観察され、Endosome分画に蓄積していた。細胞外カルシウム濃度の低下に素早く応答してNa+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートが誘導され、Na+,K+ATPaseの機能が亢進する。しかし、α-klothoノックアウトマウスではこのような応答は観察されず、この応答はα-Klothoに依存していた。また、Na+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートとα-Klotho蛋白の分泌が同時に起こり、相関していた。これらの事実は、Na^+,K^+-ATPaseの細胞表面への移動はConventional pathwayとa-Klotho dependent pathwayの2つのシステムからなっており、細胞外のカルシウム濃度が低下するとその低下を細胞表面に存在するセンサー分子が感知し、そのシグナルがα-Klotho・Na+,K+ATPase複合体,あるいは複合体を持つ分泌顆粒に伝わり、α-Klotho蛋白の膜貫通ドメイン近傍での切断、Na+,K+ATPaseとの解離がおこり、Na+,K+ATPaseの細胞表面への移動とα-Klothoの分泌がおこることを強く示唆している。 α-klotho遺伝子は腎遠位尿細管においてカルシウム再吸収制御を担う細胞(TRPV5,CalD28K,NCX-1発現細胞)で発現しており、細胞外カルシウム濃度の低下に伴い大量のα-Klotho蛋白が速やかに分泌することから、血清カルシウム濃度の低下に伴い、細胞表面のNa+,K+ATPase量が瞬時に増大し、作り出されたNa+の濃度勾配の変化に依存して腎遠位尿細管におけるカルシウムの再吸収が増加することが示唆された。同様の機構は脈絡膜でも血液から脳脊髄液へのカルシウムの輸送においても機能している。また、細胞外カルシウム濃度の低下によって引き起こされるPTHの分泌もNa+,K+ATPaseの細胞表面へのリクルートによって制御されていることが明らかとなった。更に、α-klotho遺伝子変異患者の解析から、マウスのみならずヒトに於いてもα-Klothoはカルシウム代謝、リン代謝の制御因子であることを証明した。
|