研究概要 |
IgGならびにIgG・免疫複合体の輸送が腸管感染症に対してどのような意義をもっているか,またFc受容体がどのような分子を介してIgGならびにIgG・免疫複合体の輸送を行うのかを解析した。中でも活性型Fc受容体が腸管感染症において、どのような役割を持っているのかを検討した。活性型Fc受容体欠損マウスである、FcRγ鎖欠損マウスあるいはコントロールマウス(FcRγ鎖ヘテロマウス)にヒト病原性大腸菌モデルであるC. rodentiumを経口感染させ,マウスの臨床的変化を観察,また感染2,3週後の大腸組織を採取して検討を行った.FcRγ鎖欠損マウスは感染10日目ごろより有意な体重減少、感染14,21日目の便中菌量の増加、また血清および便中の菌特異的IgGの産生量の低下が認められた。また、通常の10倍量の菌量投与においては平均生存率の低下もみとめた。大腸の病理組織学的評価においても高度の炎症を認めた。FcRγ鎖欠損マウスではコントロールマウスに比べて有意にC. rodentiumに対する感受性が増大していた。その理由として、FcγRγ欠損マウスでは抗原特異的IgGの存在下での樹状細胞の早期エンドサイトーシスの低下、樹状細胞の分化の遅延、T細胞活性化の低下が認められた。また、マクロファージにおいても抗原特異的IgG存在下での貧食能の低下を認め左。以上により抗原提示細胞上にある活性型Fc受容体を欠損させることで、様々な抗原提示細胞の機能低下を引き起こし腸管感染症に対する粘膜防御能が低下することが示唆された。
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