研究課題
特定領域研究
小胞体ストレスが各種の神経変性疾患の発症に深く関連することが数多く報告され、小胞体ストレスの重要性が注目されている。また、神経変性疾患にみられる細胞内の現象として、オートファジーの亢進がある。オートファジーは、日常的な細胞の代謝回転に貢献しているが、状況に応じて著しく誘導され、飢餓時の栄養源確保やオルガネラの量的調節に働く。我々は、小胞体ストレスによりオートファジーが誘導されることを世界で初めて見出した。SK-N-SH神経芽細胞腫に小胞体ストレスを負荷すると、オートファゴソームの形成が電子顕微鏡を用いて観察された。また、小胞体ストレスを負荷すると、オートファゴソームを示すGFP-LC3ドット形成が、光学顕微鏡下においても観察された。我々は小胞体ストレスによるオートファジー形成の細胞内シグナル経路を明らかにするために、小胞体ストレスセンサー欠損細胞や阻害剤などを用いて検討した。IRE1欠損細胞やJNK阻害剤により、小胞体ストレスによって誘導されるオートファジーは抑制された。これらの結果により、IRE1-JNK路が小胞体ストレスによるオートファジー誘導経路に必須であることが明らかとなった。また、小胞体ストレスによるオートファジーの形成が、細胞死に対する効果を検討したところ、細胞死抑制に寄与していることが明らかとなった。最近になって、小胞体ストレス応答の機能不全は、神経変性疾患以外にも、糖尿病や骨疾患など、広範囲にわたる疾患に関与することが明らかになってきた。これら疾患の治療法開発に向けて、小胞体ストレスによりオートファジーが誘導されることを明らかにした意義は大きいものと考えられる。
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Molecular and Cellular Biology 26(24)
ページ: 9220-9231