研究概要 |
我々は最近、IgMに対する受容体(Fcα/μR)を世界に先駆けて同定した(Shibuya, et al.,Nature Immunology 2000、Shimizu, et al.,Immunogenetics 2001)。これは同時にIgAに対する受容体でもあった。Fcα/μRのmRNAは免疫組織の他に、神経系、精巣に発現を認めた(Sakamoto, et al., Eur J Immunol,2001)。申請者らはFcα/μRの生体内機能を明らかにする目的で、Fcα/μRの遺伝子欠損マウスを作製した。ホモ遺伝子欠損マウス(Fcα/μR-/-)はメンデルの法則に従って産まれてきたが、全く予期せぬことに、オスFcα/μR-/-は完全な不妊を呈した。しかしメスFcα/μR-/-の生殖能に異常はなかった。そこで、不妊の原因を明らかにするために、Fcα/μR-/-の精巣の組織学的解析をしたところ、精子の各分化ステージで野生型にはみられない伸長精子細胞の頭部の形態異常がみられ、正常な頭部を有した精子が観察されず、精巣上体頭部から尾部にかけての精子の貯留もみられなかった。以上の結果からFcα/μRr-/-マウスでは精子細胞の分化異常により不妊を呈するものと考えられた。 本研究では、Fcα/μRのmRNAの発現をPCRで解析するとともに、Fcα/μRの蛋白レベルでの発現を抗Fcα/μRモノクローナル抗体(TX57)を用いて解析した。その結果、Fcα/μRは未熟な精子細胞に発現することを明らかにした。
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