研究概要 |
膜小胞の分泌機構を探るため,十分に分化した3T3-L1脂肪細胞をインスリン,TNF-α添加条件下および虚血誘導条件下で培養し,定法により膜小胞を集め,MFG-E8を始めとするマーカータンパク質に対するウエスタンブロット解析およびMMPをターゲットとしたザイモグラフィーを実施した。いずれの条件下でもアディポソーム主要タンパク質,MFG-E8の分泌量が増加し,各種阻害剤を用いた実験よりNF-κb経路がこの増加に深く関与することが明らかとなった。またマクロファージ(J774細胞)によるアディポソーム分泌制御の可能性を探るため非接触共培養(トランスウェル法),接触共培養系を用いて解析したところ,アディポソームを介したMFG-E8およびMMP-9の発現・分泌が有意に増加することを見出した。現在もsiRNAや中和抗体を用いてマクロファージに由来する原因分子の特定を行っている。 MFG-E8のELISAによる高感度測定法の確立のため新たにN末端のEGF様ドメイン,C末端のC2ドメインに対するウサギポリクローナル抗体を作成した。市販のキャプチャーモノクローナル抗体とこれらを組み合わせることにより数十ng/mL程度の測定が可能になりつつある。またMFG-E8のホスファチジルセリンに対する高親和性を利用したアッセイ法も同様に開発した。両解析法とも現状では3T3-L1脂肪細胞の培養上清であれば高感度でMFG-E8の測定が可能である。 MFG-E8ノックマウス(阪大・長田重一先生より分与)を用いて通常食,高脂肪食負荷実験に着手した。野生型に比べ抗肥満を呈する様子は今のところ観察していないが,今後各種血液パラメータの解析を通じ代謝状況の違いを明らかにする予定ある。また組織,細胞レベルでの解剖学的な違いについても順次解析する。
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