研究概要 |
生活習慣病の克服には,脂肪細胞肥大化の研究と並び,脂肪細胞分化機構の解明も重要な課題である。我マは,すでに脂肪細胞分化の最も初期において発現が変動する遺伝子群を多数単離した。そのうち,データベースに登録のない新規遺伝子としてfad24,fad104,fad158(fad;factor for adipocyte differentiation)を同定し,これら新規遺伝子が脂肪細胞分化に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。本年度はfad24を中心に検討し,以下の結果を得た。 新規遺伝子fad24は,DNA複製開始因子であるHBO1のDNA複製起点へのリクルートを介してDNA複製を制御することにより,脂肪細胞分化に必須であるclonal expansionを正に制御することを明らかにした。さらにfad24は,clonal expansionのみならず,通常の細胞増殖においてもDNA複製を正に制御することを見出した。また,fad24の細胞がん化における機能解析から,fad24がNF-κBによる遺伝子発現制御の抑制を介してH-ras^(val12)のトランスフォーム活性を抑制することが明らかになった。このように,新規遺伝子fad24の新たな機能として,DNA複製制御およびNF-κB活性制御への関与を明らかにした。これらの新知見は,脂肪細胞分化や細胞がん化といった高次生命現象のメカニズム理解につながる重要な成果と考えられる。 以上のように,脂肪細胞分化の初期に機能し重要な役割を果たすと考えられるfad24について,新たな機能を明らかにした。現在これらのシグナル伝達様式を明らかにしつつある。今後さらに詳細な解析を行うことにより,脂肪細胞分化初期における因子群のシグナル伝達連関の全体像が明らかになり,新たな治療薬開発への足掛かりとなることが期待される。
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