研究概要 |
コラーゲン分子は会合して繊維を形成する際に、隣の分子と分子軸方向に67nm(D-stagger)だけズレて会合する。このズレは、X線小角回折でも30〜40次の子午線反射として観測されるほど厳密なものである。本研究では、このズレの形成機構をコラーゲンのアミノ酸配列と我々が最近明らかにしたコラーゲン分子の平均構造に基づき解明する。本年度の成果は以下の通りである。 1、ヒトのI,II,III型コラーゲンに対して、アミノ酸配列中の荷電アミノ酸残基(Lys,Arg,Glu,Asp)のCβ炭素上に、対応する電荷(+1 or -1)を与え、我々が提案している7/2-helix構造に基づきCβ炭素の3次元座標を求めた。このようにして作ったコラーゲン分子2つを、平行に揃えた状態から5残基ずつ分子軸方向にずらせながら、各配置における分子間静電相互エネルギーを求めた。その結果、ホモトライマー([α1(I)]_3,[α1(II)]_3,[α1(III)]_3)では、1D(235残基=67nm)の時に最も安定であることを、明確に示すことが出来た。 2、コラーゲン分子間相互作用では疎水相互作用も重要である。Leu側鎖間の疎水相互作用を始めてモデルペプチドの高分解解析から明らかにした。また、コラーゲン分子中で出現頻度の高いLeu-Hyp-Gly配列におけるLeu側鎖は、(+)gauche-trans構造しか取り得ず、棒状のコラーゲン分子からLeu側鎖は突き出ており、分子間相互作用に最適であることを示した。
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