研究概要 |
真核細胞では核と細胞質は核膜により隔てられており,その間の輸送はすべて核膜孔複合体(NPC)を介して行われる。核-細胞質間の輸送には受動輸送と能動輸送があるが,分子量60kDa以上の分子は単独(拡散)ではNPCを通ることができないので能動輸送される。この核-細胞質間の能動輸送はおもにインポーチンβファミリータンパク質により行われる。トランスポーチンもその一つで,輸送される基質の核内移行シグナル(NLS)を認識して様々なタンパク質の核内輸送に関与している。本研究では核局在配列(NLS)としてPYモチーフをもつ3種類の輸送基質とトランスポーチンとの複合体の原子分解能での立体構造をX線結晶解析法で決定した。その結果,トランスポーチンは非常に柔軟な分子で,様々なNLS結合によってそれぞれ異なる構造変化を誘発するとともに,この柔軟性を利用してPYモチーフをもつタンパク質の核内輸送に関与していることを明らかにした。さらに,トランスポーチンとNLSとの相互作用をトランスポーチンの変異体を用いた表面プラズモン共鳴法/GSTプルダウンアッセイで解析し,これまで明らかにされていなかった細胞質における輸送基質の認識機構および核内での基質解離機構を実験的に始めて解明し,Molecular Cell,28,57-67,October12,2007に発表した。
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