研究概要 |
X線結晶構造解析により原子モデルが既に研究分担者により得られているThermos thermophilus由来のシャペロニンGroEL-GroES-ADP複合体を用いて、その単粒子解析を行った。天然から得た試料は、翻訳されたポリペプチドが折り畳まれるために複合体と相互作用しており、基質も含んだ複合体の立体構造が得られることが期待できた。その結果、2.7nm分解能の構造が得られ、そのcis-cavity中に、いろいろな基質が平均されたと考えられるコントラストを明瞭に観察することができた。その平均された基質のコントラストは、ciscavityを形成しているシャペロニンとは直接接触しておらず、これは、すべての基質が結合するような相互作用部位が存在しないことを示唆していると考えられる。加えて、X線結晶構造解析では、シャペロニンが7回対称性を持っていなかったが、単粒子解析においても同様にcis-cavityに近い部分が7回対称性からずれていることが観察できた。 またシャペロニン以外に,単粒子解析を検討していた,同じくThermos thermophilus由来のV-ATPaseについては,その膜内在部分Voドメインを用いて二次元結晶を得ることができたので,その解析を行った。低温電子顕微鏡像から7Å分解能で投影像を計算したところ,12個のIサブユニットからなるリング構造が明らかになった。今まで,このリング部分についてはATPase部分の構成サブユニット数である3の倍数のものはほとんど見つかっていなかったので,その対称性のミスマッチが機能に重要であると考えられていたが,この12個のサブユニットの観察により,対称性のミスマッチは重要でないと強く示唆された。
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