研究概要 |
植物は移動することができないために、その必要とする栄養分を外界から取り入れるとともに、吸収した栄養分を植物体内で効率的に再利用している。例えば、植物体は、光合成機能の低下とともに、Rubiscoを分解し、新たな生長部分に転流、再利用する。我々は、タバコを材料に、葉緑体核様体タンパク質であり、アスパラギン酸プロテアーゼであるCND41が、窒素欠乏条件下の老化ならびに下位葉における蛋白質、特にRubiscoの分解に関与していることを明らかにしてきた。本研究ではCND41によるRubisco分解機構の解明を起点として、窒素欠乏時における個体における窒素再利用機構の分子機構の解明をはかった。 昨年度に引き続き、窒素飢餓条件下における遺伝子発現解析を行った。1,2,3,5,10日間の窒素飢餓処理において、野生株、CND41ホモログ遺伝子At5g10770過剰発現株(7700X)、同遺伝子RNAi発現抑制株(770UTRir)、オートファジー変異株(atg5-1)を用いて、At5g10770、ATG5ならびに、老化誘導性プロテアーゼSAG12の発現を解析した。その結果、At5g10770とATG5、SAG12の発現は、窒素飢餓により誘導されるが、特に、これらの遺伝子(At5g10770あるいはATG5)の発現が抑制されることにより、それ以外の遺伝子の発現が促進されるという発現の相補性を確認するとともに、その相補作用は窒素欠乏処理1日後においても認められることを明らかにした。すなわち、窒素欠乏1日目の770ir株において、ATG5ならびにSAG12の顕著な発現誘導が認められること、一方、atg5-1変異株においては、At5g10770ならびにSAG12の顕著な発現誘導を認めた。また、7700XにおいてATG5ならびにSAG12の発現が抑制される傾向を認めた。一方、これらの遺伝子の発現誘導における光の影響を解析したところ、十分な窒素施肥条件下においても、明暗周期に伴い、遺伝子の発現に変動があることを認めた。
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