研究概要 |
シロイヌナズナでは,気孔が開く際に細胞内へのK^+の選択的透過を担う電位依存性K^+チャネルとしてKAT1(分子量78k×4)が知られる。植物イオンチャンネルの立体構造及びその機能相関の解明は,植物の環境適応における膜輸送系の機能分化を理解するための鍵となる。そこで本研究では,孔辺細胞に局在するKAT1の膜電位センシング機構の構造生物学的解明を目的とし,KAT1の発現,精製に取り組んだ。 界面活性剤により可溶化したKAT1をNiアフィニティークロマトグラフィーにより精製する場合,(1)昆虫細胞中に発現したKAT1のうち1%程度と低い吸着量を示す,(2)EDTAを除去する際にメタロプロテアーゼによる精製チャネルの分解が認められる,という大きな2つの問題があった。可溶化に優れた界面活性剤を選抜し,Coアフィニティークロマトグラフィー精製に適した溶液条件を検討することで,この問題を解決した。さらにゲル濾過クロマトグラフィーを行ない,精製標品を得た。現在,スパースマトリックス法による結晶化スクリーニングを実施している。 KAT1は6回膜貫通型のサブユニットからなるShaker型イオンチャネルファミリーに属し,電位センシングに関わるαヘリックスS4を有している。そこで,S4センサーを立体構造特異的に認識するモノクローナル抗体を取得した。本抗体は速やかにKAT1に結合したが,細胞膜上のKAT1の阻害は比較的遅いことが示唆された。
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