研究課題
特定領域研究
個体の発生・分化は、遺伝子発現を時空間的に制御することで正常に進行する。なかでも生殖細胞の分化においては、体細胞と異なり転写レベルでの調節に加え、翻訳レベルでの調節が遺伝子発現に大きく寄与している。我々はこれまでに、線虫やカエルの卵子でmRNAポリA鎖を伸長させるポリAポリメラーゼ(PAP)GLD-2のマウスホモログ(mGLD-2)に着目し、Mgld-2が細胞質でのポリA鎖付加に必須なCPSF160およびCPEBと協調してCyclinB1やMos MrnaなどのポリA鎖を伸長させることで、卵成熟の進行に必須な細胞周期関連タンパク質の翻訳を活性化していることを明らかにしてきた。そこで本年度は、作製したmGLD-2ホモ欠損マウス卵子の表現型について詳細に解析を行った。内在性および外来性mRNAを指標にポリA鎖伸長活性を検討した結果、ホモ欠損卵子ではヘテロ欠損卵子と比較して活性が低いものの有意な差を認めることはできなかった。このことを反映するように、ヘキスト33342を利用した細胞分裂過程の染色体分配や、胚発生速度のタイムラプス観察においても、ホモおよびヘテロ欠損卵子との間で違いはなかった。これらのことはmGLD-2のポリA鎖付加活性を補完する酵素の存在を示しており、卵子における減数分裂の進行が、複数個のPAPによる細胞周期関連タンパク質の翻訳活性化を介した複雑なネットワークで制御されていることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件)
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