研究概要 |
ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>)チャネルはcAMP標的分子Epac2、Ca^<2+>センサーRim2との複合体(K_<ATP>チャネル分子集合体)を構成する(Ozaki, et. al.,Nat Cell Bio1,2000)。しかしながら、これらのK_<ATP>チャネル分子集合体の構成分子の相互作用メカニズムや相互作用の生理的な意義は全く不明であった。そこで本研究では、K_<ATP>チャネル分子集合体の構成分子間のシグナルクロストークを解明した。Epac2によるK_<ATP>チャネル活性制御を、Epac2欠損マウスの膵β細胞からのcAMPによるインスリン分泌増強を全反射顕微鏡で解析した。また、Epac2欠損マウスと膵β細胞腫発症マウスと交配することにより、Epac2を欠損した膵β細胞株を樹立した。作製されたEpac2欠損膵β細胞株ではcAMPによるRap1活性化が消失しており、Epac2は膵β細胞ではcAMPによるRap1活性化を担うことが明らかになった。Epac2欠損マウスの膵β細胞ではcAMPによるインスリン分泌増強が初期相のみで消失していた。このことからEpac2はcAMP依存性にK_<ATP>チャネルのATP感受性を亢進している可能性あるいはK_<ATP>チャネル閉鎖以降のステップに作用して分泌を増強している可能性が示唆された。Rim2に関しても同様にRim2欠損膵β細胞株を樹立したところ、K_<ATP>チャネルの閉鎖を介するグルコース誘導性インスリン分泌は明らかに障害されていた。Rim2はCa^<2+>センサードメインを有することを合わせ考えるとK_<ATP>チャネル閉鎖に惹起されるCa^<2+>の増加をRim2が感知しインスリン分泌に寄与している可能性が考えられた。
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