研究概要 |
抗原が生体内に侵入すると、免疫システムが作動し、B細胞が個々の抗原に特異的な抗体(免疫グロブリン)を分泌する。抗体は抗原と結合することによって修飾を受け免疫複合体を形成し、細胞性免疫を担うリンパ球、顆粒球、マクロファージなどの種々のエフェクター細胞とこれらの細胞に発現する免疫グロブリンFc受容体を介して結合することにより、これらの細胞の活性化を制御する。したがって抗体は抗原刺激に反応して分泌され、免疫グロブリン受容体を介して抗原情報をエフェクター細胞に伝えるシグナンレ伝達分子である。 申請者らは、IgMに対する受容体(Fcα/μ受容体)を世界に先駆けて同定した(Shibuya,et al.,Nature Immunology 2000、Shimizu,et al.,Immunogenetics 2001)。これは同時にIgAに対する受容体でもあった。申請者らは、Fcα/μ受容体が免疫組織の他に、中枢神経系、精巣に発現することを明らかにした(Sakamoto,et al.,Eur J Immunol 2001,Nakahera,et al,Neurosci Lett 2003)。したがって、これらの臓器、組織ではFcα/μ受容体がリガンドであるIgAあるいはIgMと結合して、高次生命統御機能を担っていることが考えられる。実際、Fcα/u受容体の遺伝子欠損マウスでは、完全な雄性不妊を示し、Fcα/μ受容体が精巣において重要な役割を担っていることを示している。 本年は、Fcα/μ受容体め遺伝子欠損マウスにおいてT非依存性抗原に対する液性免疫応答が亢進していることを明らかにした。これは補体依存性によるものであることも明らかにした。
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