研究概要 |
我々は、これまでに「異なる種類のbHLH型転写因子による神経上皮の領域化モデル」提唱した(The Cerebellum 2006)。これは、「大脳でも小脳でも、異なる種類のbHLH型転写因子によって神経上皮が領域化され、神経細胞の運命決定がなされている」という共通の分子機構が存在するというモデルである。このモデルが他の脳領域でも適用できる普遍性を持っているかどうか、またその過程に細胞外の情報がいかに寄与しているのか、を他の脳領域におけるPtflaの発現と役割を調べることによって検討しようとしてきた。尾側後脳領域の神経管では、やはりbHLH転写因子(Mathl, Ptfla, Ngnl)によって区別される神経上皮ドメインが存在することが明らかになった。Ptflaを発現する神経上皮ドメインからは、下オリーブ核神経細胞が生み出されることが明らかになり、さらにPtflaノックアウトマウスでは下オリーブ核が形成されないことが認められた。詳細なノックアウトマウスの解析から、Ptflaが下オリーブ核神経細胞の生存と分化、移動に関与することが明らかになった。 また、Ptfla遺伝子のノックアウトマウスでは、下オリーブ核神経細胞が神経上皮で生み出された後、正しく腹側へと移動する事ができなくなっていることを見いだした。この神経細胞移動には、ネトリンやDCC, Ng-CAMなどの関与が示唆されているので、このマウスを詳しく解析することによって、神経細胞がいかにして細胞外の情報に従って移動をしていくのかを今後明らかにしていきたい。
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