研究概要 |
本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている.resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的解析システムを構築し,診断に極めて有効であることを示した.array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した.現在までに,AR-JP症例で299 alleleのPark2遺伝子欠失/重複を同定し,breakpointを塩基配列レベルで決定した.その解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度で生じていることを強く示唆するデータを得た.さらに,120種類の癌細胞株を解析し,31種類のPark2遺伝子の欠失,1種類の重複を見いだし,breakpointを決定した.その結果,Park2遺伝子の欠失/重複はgermline(AR-JP),somatic cell(癌細胞)で,ある部位に集中して生じていること,この部位はcommon fragile siteと呼ばれる領域に一致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される.
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