研究概要 |
[目的]プリオン病は脳に異常型プリオンタンパク質(PrPSc)が蓄積し、神経細胞死を来す難病である。未知分子シャペロンXの仲介で正常型プリオンタンパク質(PrPC)が高次構造変換されてPrPScを生ずる。Xの本体を解明出来れば、PrPC-PrPSc変換阻害薬の開発が可能となる。本研究では、新しいタンパク質間相互作用解析法プロテインマイクロアレイを用いて、ヒトPrPC結合タンパク質(PrPC-interacting proteins;PrPIPs:X候補)を網羅的に解析、結合部位を同定、プリオン病病態解明・早期診断法・分子標的薬開発に役立てる。 [方法・結果]1.PrPC特異的probe作成:PrPC23-231をpSecTag/FRT/V5-His TOPOにクローニング、Flp-In-293細胞に導入、培養上清中に分泌されたrecombinant human V5-tagged glycosylated PrPCを精製し濃縮した。2.プロテインアレイ解析:ProtoArray Human Protein Microarray v3.0(5,000 proteins)を上記プローブと反応させ、47種類の新規 PrPIPsを同定した。4種類のPrPIPsに関しては免疫沈降で結合特異性を検証、蛍光イメージングでPrPCとの細胞内共局在を確認した。KeyMolnet解析でPrPC-PrPIPs分子ネットワークはAKT,JNK,MAPKシグナル伝達系との関連性を呈した。 [結論]PrPCは神経細胞の生存や分化に関連する多数の重要なシグナル伝達因子と結合することを発見した。PrPCインターラクトームの異常は、プリオン病脳で見られる広汎な神経細胞死を誘導する可能性がある。
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