研究概要 |
本研究では,細胞レベルでの高精度な手術的操作(細胞サージェリー)をオンチップ上で実現するための基盤技術の確立を目的とし,提案する"マイクロニードル搭載型バイオプローブ"を開発するための要素技術を検討した.得られた成果をまとめると以下のとおりである. 1.マイクロニードル搭載型バイオプローブ作製プロセスの開発 1)シリコンの深堀エッチング(DRIE)と熱酸化を多段階に繰り返すプロセスを提案し,先端径100nm以下の先鋭化マイクロニードル(外径5.5μm,長さ20μ)の作製が可能となった.これによって,細胞(直径10〜20μm程度)にダメージを与えることなく穿刺可能な先鋭化ニードルの作製技術を確立した. 2)デバイス作製のために必要となるシリコン基板の新規な接合技術(電界援用直接接合)を確立した.基板表面同士の接触状態の向上を目的とし,直接接合において電界を印加することで,最小線幅10μmの凸パターンを形成したSi基板でも,接合面積60〜80%,接合強度0.4MPa程度の接合が可能であることを示した. 2.マイクロニードルの性能評価 1)細胞を模擬したゼラチンへの穿刺実験を行い,穿刺性能を評価した.その結果,ニードル先端形状によらずゼラチンへの穿刺応力は一定となり,穿刺力はニードル先端の表面積に比例して増加することが明らかとなった.また,振動を付加して粘性抵抗を増加させることで穿刺性能を大幅に向上できることを示した. 2)液体吐出性能を評価し,極微小なニードル(内径3.5μm)であっても液体(水)の吐出が可能であることを示した.この際,ニードル内径が小さくなると先端部分での液滴の形成によって吐出に必要となる圧力が急激に増加することがわかった.また,吐出流量はハーゲン・ポアズイユの式に従い,内径の4乗に比例することを示した.
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