研究概要 |
1.細胞用繰り返しひずみ負荷装置の設計と製作 共焦点レーザ顕微鏡のステージ上で,繰り返し伸展ひずみを負荷しながら細胞の培養が行えるとともに,内部微細構造の蛍光観察およびAFMによる細胞の力学的特性計測を行うことのできる装置を製作した。細胞が接着したシリコーンシートの両端を,互いにリンクされたグリップで把持し,一方のグリップを移動させることによってシートを両側から均等に伸展させる構造であるため,シート中央付近に存在する細胞ではひずみ負荷前後に同じ細胞を観察することが可能であった。装置を覆うようにアクリル性の保温ボックスを設置し,ボックス内に導入するCO_2濃度を5%に制御するとともに,顕微鏡ステージをヒータで加温することによって,装置全体を培養環境下に置くことができる。 2.細胞用繰り返しひずみ負荷装置の性能評価と改良 製作した装置を用いてシリコーンシートに10%の静的伸展ひずみを与えたところ,伸展方向と垂直な方向に2%程度(伸展方向の20%)の圧縮ひずみが生じていた。伸展方向と垂直な方向には膜を拘束する改良を行った結果,垂直方向のひずみを伸展方向のひずみの1%程度にまで抑制することが出来た。また,弾性膜中央部に生じたひずみはほぼ均一であった。これにより,接着細胞に一軸の伸展ひずみを負荷することが可能となった。 3.基材の伸展により細胞に生じたひずみの計測と細胞のスティフネスの計測 血管平滑筋細胞に微小ビーズを付着させて,接着基材に10%の伸展ひずみを負荷する前後の画像から細胞に生じたひずみを計測したところ,細胞に生じるひずみの大きさは基材のひずみよりも小さく,また細胞の配向方向に依存すること,核領域ではひずみが小さい傾向があることがわかった。また,ひずみ負荷により平滑筋細胞のスティフネスが増加する傾向がみられた。
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