配分額 *注記 |
15,820千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 1,320千円)
2007年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2006年度: 10,100千円 (直接経費: 10,100千円)
|
研究概要 |
量子ゆらぎが超伝導体の渦糸ダイナミクスに及ぼす影響,あるいは絶対零度近傍に存在する量子渦糸液体(QVL)相(渦糸固体が量子ゆらぎにより融解した渦糸液体相)における渦糸ダイナミクスがいかなるものかは,理論・実験共,未解明である。これらの問題は,4Heの超流動とのアナロジー,あるいは渦糸の巨視的量子トンネルの観点から興味がもたれる。本研究では,熱的液体相からQVL相への移り変わりに伴う渦糸ダイナミクスの変化を,渦糸フローに伴って発生する電圧ノイズを中心とする動的測定によって明らかにすることを目的とした。 比較的ピン止め力の強い2種類のアモルファス膜(Mo_xSi_<1-x>及びMg_xB<1-x>),及びピン止め力の弱いアモルファスMo_xGe<1-x>膜を調べた。その結果,いずれの系でも極低温高磁場域にQVL相が存在すること,及びQVL相において異常な渦糸ダイナミクスが現れることがわかった。すなわち,これらの現象はアモルファス物質の種類やピン止め力の強さに依らない普遍的現象であることがわかった。ノイズスペクトラムの解析から,この異常な渦糸ダイナミクスの起源として,最大で数千個の渦糸からなる渦糸バンドルの量子トンネル機構を提案した。 さらに,極低温の渦糸固体相におけるダイナミクスも調べた。モードロック共鳴法を用い,フローさせた渦糸系が速度増大に伴って格子を組む動的秩序化現象を,極低温域(〜0.1K)において初めて観測することに成功した。また一定温度で磁場を上げると,ある磁場を境に,フローさせた渦糸系の格子の秩序が高速でも回復しなくなる動的融解現象を観測した。さらに極低温では,静的な融解磁場よりも低磁場でこの動的融解が起こること,すなわち,(静的な)固体相であっても,フローさせた渦糸状態が量子的な液体フローになっている異常な磁場域が存在する事実を初めて見出した。本成果は,4Heの"supersolid"を理解する上での手がかりも与えると期待される。
|