配分額 *注記 |
16,340千円 (直接経費: 15,200千円、間接経費: 1,140千円)
2007年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2006年度: 11,400千円 (直接経費: 11,400千円)
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研究概要 |
白亜紀の海洋無酸素事変2(OAE2)は,世界で最も研究されているOAEであるが,本研究では前弧海盆堆積物である蝦夷層群堆積岩を用いて,世界最高の解像度での古環境解読を目指した. 研究地において数千年の解像度で炭素同位体比(δ^<13>C)層序を構築し.OAE2研究の基準となっている英国の地層で認められるδ^<13>C変動区分を全て確認した.この成果によりOAE2期間中,欧米で最も深刻な酸素欠乏が記録され, CO2の大気海洋からの除去による寒冷化が記録されている範囲を蝦夷層群中に特定することに成功した.その範囲(〜70m)の泥岩をエンジンカッターで連続採集し,1/1スケッチを取り,1/5柱状図を作成した.これにより再堆積,生物擾乱混入物を分析対象から除去し,また層序ギャップを評価し,数百年という超高解像度解析を実現した. 欧米と調和的なδ^<13>C変動の中に,本研究特有のイベントが見られた(NEMOイベント).2.7‰に及ぶ負エクスカーションである. NEMOイベントを境として,下位では数百〜数千年程度の範囲ではδ^<13>Cは安定するが,上位ではばらつく.これは地球表層の炭素循環の変革を示唆している可能性があり,炭素循環の再構築とNEMOイベントが関連している可能性がある. この解像度と対比精度を土台として浮遊性微化石とバイオマーカーを用いた古環境の解読を進めた. OAE2の開始に伴い,浮遊性有孔虫全体が堆積物から姿を消す現象を2度に確認した.100km以上離れた2地域から確認しているので,露頭条件に左右されて化石の保存性が変わるために産出/不産出が交互するのではない.バイオマーカーでは,陸上植物由来分子の量比が変化しているので,背後の植物相に大きな変化が生じた可能性が示された.これら古環境分析の層序学的解像度は,δ^<13>Cの高い解像度には追いついていない.今後,層準を絞って解析を進める.
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