研究概要 |
本研究では多相混合体理論(Multi-phasic Mixture Theory)を導入し,冠循環システムでは小動脈または小静脈から徐々に分岐し、毛細血管に到達するまで階層的血管構造が存在することを考慮して、各階層の血液を独立した流体相として,心筋基質を固体相とした混合体理論に基づく多相混合体モデルにより、冠循環システムの階層的構造を反映した階層型冠循環数理モデルを構築した。さらに固体相及び流体相に非圧縮性を課すLagrange Multiplier法を導入した重みつき残差法による非線形有限要素法の定式化及び離散化を行い,非線形解析に必要な剛性マトリックスを導出した.階層型冠循環モデルでは同じ節点で各階層が共存するため、膨大な節点数を有する実心臓の解析に対して、効率的解析を行うため、各階層の血液相対流量の代わりに、各階層血液の圧力を変数とするように有限要素定式化のreformulationを行い,非線形有限要素解析プログラムを作成した.さらに,開発したプログラムを用いて、心臓の拍動と冠循環間の力学的連成を反映した数値解析を行い、本研究で提案した理論モデルを用いれば、冠循環における冠動脈(または冠静脈)血流の拡張期(または収縮期)優位などの特徴を再現でき、また臨床応用の可能性を提示し、提案した理論モデルの妥当性について検証を行った。本研究により,冠循環における心筋の収縮・拡張が心筋内冠血管に与える外圧の変化を通じて血流の分布に及ぼす影響を解明することが可能となり,虚血性心疾患の病因解明及び診断治療に貢献できる.
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