研究概要 |
本研究では,塩害を受ける鉄筋コンクリート部材に対して,各種非破壊試験を駆使して「塩害劣化損傷度マップ」を作成し,これをインプットとした構造解析により部材の現有性能の評価と劣化予測を行う手法を開発することを目的としている。具体的には,(1)部材性能(耐荷性能)に与えるファクターを抽出し,これらに関わる情報を得るために必要な各種非破壊試験法を駆使した「塩害劣化損傷度マップ」の作成方法を検討した。特に,(2)鉄筋腐食に伴うコンクリートと鉄筋との付着力の変化における各種非破壊試験法の役割・適用範囲を把握した。続いて,(3)マップの情報をインプットデータとして構造解析を行ない,部材の現時点での耐荷性能を定量的に推定する手法を開発した。以下は本研究で得られた成果の概略である。 (1)非破壊試験データに基づく劣化損傷度マップの作製方法の検討 鉄筋コンクリート供試体を電食による塩害劣化促進試験に供し,鉄筋腐食やひび割れ等の劣化を人工的に再現した。こられの供試体に対して各種非破壊試験を適用し,供試体の劣化損傷度マップを作成した。自然電位,分極抵抗値および超音波伝播速度に基づく劣化損傷度マップは,コンクリートはつり後に確認した実際の鉄筋腐食状況と良い対応を示した。 (2)付着力の変化過程における各種非破壊試験の適用範囲に関する検討 付着力の変化過程において,各種非破壊試験を適宜使い分けることにより,鉄筋とコンクリートとの付着力を把握できる可能性があることがわかった。 (3)劣化損傷度マップをインプットとする構造解析手法による耐荷性能の推定に関する検討 上述の劣化損傷度マップをインプットとして耐荷性能を的確にアウトプットしうる構造解析手法を検討し結果,解析結果と実験結果とにはおおむね良好な対応関係が見られた。
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