研究概要 |
近年,ペットを室内で飼育することが多くなり,ペットが保有する微生物やペットアレルゲンなどによってアレルギー性疾病を引き起こすことが考えられる。また,住宅の高気密化により,室内で発生した汚染物質は,窓開け換気等を行わなければ速やかに外に排出されない。このような現状から,ペット由来の汚染物質が室内環境汚染を引き起こすことが懸念される。そこで,本研究では,ペットを飼育している住宅を対象に,揮発性有機化合物(VOCs),粒子状物質,パスツレラ属菌,ペットアレルゲン等を中心とした室内空気汚染物質の実測を行い,ペット由来の室内環境汚染の実態を把握し,その対策について検討することを目的とした。 本年は,住環境の違い,とりわけ,住まい方の異なる住宅による差異について検討を行うために,気候の異なる中国,台湾においてアレルゲンの測定を行った。東京における住宅の測定と,近年急激的に住環境が変化した中国・上海,1年中温暖な環境にある台湾・高雄の住宅を対象とした。結果として,季節による差異は,冬季に比べダニの活動時期である夏期のアレルゲンDer1量が多いことが確認された。また,住まい方による差異としては,調査時期が異なることから,秋期に測定した上海の住宅内のダニアレルゲン量がそれほど多くなく,春前の高雄のおける住宅内のDer1の量は東京の夏期と同程度であった。また,東京(夏期),上海,高雄における住宅内のDer1の測定結果の間に顕著な差が見られなかった。よって,ペットアレルゲンについては,季節の差ではなく,住宅の床仕様の違いによる差があった。従って,ペットアレルゲンの対策は1年中行う必要があると考えられる。 更に,室内でペットを飼育している室内におけるVOCsや粒子による汚染への対策を検討するために,家庭で一般的に可能な対策として空気清浄機と電気掃除機,そして換気扇,窓開けの効果について検討を行った。まず,空気清浄機による粒子状物質の除去傾向について検討を行った。空気清浄機では,比較的大きな粒子の方が除去しやすい傾向にあり,サブミクロン粒子についても,理想相当換気回数と同様か又はそれに近い値であった。また,低減対策について,空気清浄機の使用,窓開け,掃除機の効果についても,検討を行い,それぞれの除去特性について,昨年度の成果と共に検討を行った。 結果として,ペットを飼う場合,ペットとの接し方について節度を持つことが重要であると同時に,換気や空気清浄機の活用などの対策を心がける必要があると思われる。
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