研究概要 |
炭素のナノ粒子の凝集体であるカーボンゲルは,ナノ粒子内に発達する短いミクロ孔がナノ粒子間隙に発達するメソ孔に直接通じている特異な細孔の階層構造を有する特徴がある。特にタブレット状に成型したカーボンゲルは,電気二重層キャパシターの実セルで利用されている従来材料よりも高い容量を容易に実現でき,新規な高性能電極材料となる可能性がある。本研究では,カーボンゲルの精密構造制御,賦活処理,複合化などによって,単位質量当たりの電極容量300F/g(従来材料の2〜3倍),高出力タイプで1万サイクルクラスの寿命,単位容積当たりの容量150F/cm^3(従来材料の1.5倍以上)のカーボン電極を開発することを目的とする。 カーボンゲルの構造を原料/触媒比,炭素化条件,カーボンゲルの賦活,乾燥法(超臨界乾燥,凍結乾燥),乾燥条件によって精密に制御し,電気二重層キャパシターのカーボン電極としての高性能化を図ったところ,304F/gの容量をもつカーボンゲル電極の作製に成功した。しかし,見かけ密度が0.25g/cm^3と小さいために体積当たりの容量は76F/cm^3にとどまった。カーボンゲル,またはその前駆体である有機ゲルの内部のエネルギー貯蔵に寄与しないマクロ孔や大きいメソ孔中でゲルを合成し,炭素化によって材料の高密度化を実現し,単位体積あたりの容量の向上を図った。その結果,バインダーフリーで高い見かけ密度と180F/cm^3と高い電気容量を有するタブレット状カーボンゲル電極を作製することに成功した。次にサイクル特性の向上と更なる高容量化に取り組んだ。その結果,1万回の充放電を繰り返しても作製電極の容量低下は2%以下であることがわかった。また,サイクリックボルタンメトリー測定より,作製電極は擬似容量を含まないことが明らかとなった。更なる高容量化を目指し炭素化処理温度の最適化を行ったところ,炭素化温度は900℃が最適であることがわかり,従来のカーボンクライオゲル電極の2.5倍にあたる単位体積当たりの電気容量200F/cm^3(300mA/g)をもつ電極の作製に成功した。
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