研究概要 |
水圧破砕法は,km級の大深度における地殻応力の現位置計測を可能とする唯一の実用的手段として従来から広く用いられてきた.しかし,この方法では,坑井直交面内における最大応力を評価する要領に致命的な欠陥のあることが最近明らかになっている.その原因は,従来の仮定に反し,(a)残留き裂開口幅の存在によって,き裂の開口以前から坑井水圧がき裂内に浸入してしまうこと,(b)加圧システムのコンプライアンスC(システム内の水圧を単位量だけ増加させるのに必要な水の体積,換言すると剛性の逆数)が大きすぎるために,き裂開口の影響が坑井水圧の変化挙動に現れにくいことにある.これらを考慮して大深度での計測を可能にすべく我々は,坑井底部に直径の小さい試験孔(以下,ベビー孔)を新たに掘削して,その中で水圧破砕を実施するという新方式(Baby Borehole Hydro-fracturing, BABHY(ベイビー方式と呼ぶ))を提案した.その実用化を図るために本年度には,当初計画の通りにポンプユニットの製作に成功し,そして,それを組み込んだ,深度1キロまでの測定に耐える地殻応力測定装置の開発に成功した.さらに、地表から掘削された鉛直井に同装置を適用して,深度811mでの実証試験に成功した.また,同フィールド試験で用いたパッカー装置と大型試験片(700×700×1000mm3)による室内水圧破砕実験を実施した,圧力データと模擬地殻応力の関係が,我々の提案する理論(1/2理論と命名)通りであることを再検証した.
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