研究課題
基盤研究(B)
多剤耐性に関与しているVault粒子のRNA成分(Vault RNA)が、抗癌剤であるミトキサントロンと結合する事を我々は見出した。Vaultが他の抗癌剤とも結合するのかを、NMRを用いたケミカルシフトパータベーション法によって調べた。その結果いくつかの抗癌剤との結合が確認された。またパータベーションのパターンと以前我々が行なった生化学的実験の結果とあわせて考える事で、Vault RNAのどの部位が結合に関与しているのかも同定する事ができた。この部位に相補的なオリゴ核酸を加えてこの部位をブロックする事で、抗癌剤の結合を阻害でき、多剤耐性の克服に向けた突破口となる可能性がある。HIVのRevタンパク質とその結合RNAであるRREの複合体を試験管内で分子進化させる事で、ATPをRev依存的に捕捉するアプタマーが共同研究者の京大・森井等によって作成された。RNAとタンパクの複合体からなるこのアプタマーの動作原理を解明すべく、NMR法による解析を行なった。Revの添加に伴ってRNA中に新たな水素結合が形成される事が確認された。これによりRNA全体の立体構造も安定化される事も分かった。ここにATPを添加するとさらに新たな水素結合が形成される事が分かった。これはATPの捕捉に関与するループにおける構造形成に由来するものと、ATPとの直接的な相互作用に由来するものの両方によると考えられた。現在RNA-Rev-ATP複合体の原子レベルでの構造決定を進行させている。ヌクレエースに対する耐性を示す4'チオDNAの立体構造をDNA法によって決定した。通常のDNAが形成するB型ではなく、本来はRNAが形成するA型構造を4'チオDNAは形成する事が分かった。そしてこの構造に基づいてヌクレエース耐性を説明する事ができた。
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