研究概要 |
Ndx酵素ファミリーに属するADPリボースピロリン酸分解酵素(ADPRase)の結晶相反応過程を追跡するための反応開始トリガーを開発し,その4次元構造解析を行って以下の研究成果を得た. (1)ADPRaseの結晶に,その基質であるADPリボース(ADPR)をソーキングし,1.1Å分解能を越える良質な複合体結晶を調製することに成功した. (2)上記の結晶にZn(II)イオンをソーキングすると,反応キャビディ中のADPRの分解が開始されることを見いだし,3分から60分までの間で9種類の反応時間におけるX線結晶構造解析から,それぞれのスナップショット構造を得た. (3)一連のスナップショット構造を連続して眺めると,まず,反応キャビティに導入されたZn(II)イオンの働きでADPRのコンフォメーションが変化し,続いて,Zn(II)イオンに配位したグルタミン酸82が,同じくZn(II)イオンに配位した水から水素イオンを引き抜いて水酸化物イオンへと活性化し,最後に,活性化された水酸化物イオンがADPRのαリン原子をインライン配置で攻撃してADPRを生成物に変化させるという,一連の反応過程をその場観察することに成功した. (4)得られた結果は,従来,基質類似体との複合体の3次元構造解析のみから推定されていたADPRaseの反応機構とは大きく異なっており,酵素の反応過程を明らかにするためには4次元構造解析によるその場観察が必須であることを示すことができた.
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