研究課題
基盤研究(B)
これまで乏しい知見しかなかったショウジョウバエの高次視覚中枢の内部について個々の神経回路要素の位置を特定するため、シナプスや神経線維全体を染める抗体を用い、視覚中枢内部の局所的特徴を解析した。この結果、シナプスが球状に密集した「島」状の領域を多数同定した。これらの構造は嗅覚系一次中枢である触角葉に見られる糸球体構造と非常に類似していたので、視覚糸球体と名付けた。さらに、低次視覚中枢である触角葉と高次視覚中枢とを結ぶ視覚投射神経をラベルするGAL4エンハンサートラップ系統を用い、これらが投射する標的領域を、高次視覚中枢の内部の形態的ランドマークに従って詳細にマップした。また、出力シナプスの位置のみを特異的にラベルする手法を用いて、同定した個々の神経種について、情報が伝わる向きを解析した。この結果、低次中枢から高次中枢へ情報を伝える求心性の神経は、「コラム型」もしくは「接線型」の2種類の投射様式を示していた。「コラム型」求心性神経の末端は、全て同定された糸球体の位置と一致し、少なくとも糸球体の過半数はコラム型求心性神経の末端によって形成されていることが分かった。一方、接線型求心性神経の末端は糸球体には投射せず、それ以外の領域に拡散して投射していた。また、コラム型は経路ごとに異なる位置に投射するのに対し、接線型は複数の経路が同じ位置に重複投射していた。一方、高次中枢から低次中枢へ情報伝える遠心性神経は、すべて接線型であった。これら接線型遠心性神経の中で糸球体に投射するものはなく、また、コラム型/接線型の求心性神経の投射と重複する位置に投射するものもほとんどなかった。従って、高次視覚中枢から低次視覚中枢への情報は、低次視覚中枢から情報を受け取った高次脳領域から直接フィードバックされるのではなく、いったんさらに別の視覚中枢へ送られた情報が間接的にフィードバックされるか、嗅覚など他の感覚情報の情報が別の脳領域で統合されたものが低次視覚中枢に伝達されている可能性が高いことが示唆された。
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Neuron 56
ページ: 155-170
J Comp Neurol 497
ページ: 928-58
http://ndb.flybrain.org
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