研究課題
基盤研究(B)
上皮細胞の細胞間接着の制御機構を分子レベルで解明するため、本研究では、局在を指標とする新しい発現クローニング法であるFluorescence localization-based retrtovirus-mediated expression cloning (FL-REX)法を適用することにより、上皮細胞間接着構造であるタイトジャンクション、アドヘレンスジャンクションに濃縮する新規分子の探索を行った。まず、様々な培養上皮細胞株からGFP融合発現cDNAライブラリーを作製してスクリーニングを行い、タイトジャンクション、アドヘレンスジャンクションの既知構造タンパク質をコードする様々なcDNAがクローニングされることを確認した。さらに、上皮細胞間接着構造に濃縮する新規タンパク質として本スクリーニング法で同定した二つの低分子量Gタンパク質のGTPase活性化タンパク質ARHGAP12とSPAL3の局在を、作製した抗体を用いて蛍光抗体法によって解析した結果、両分子がアドヘレンスジャンクションに濃縮することを明らかにした。このうち、Rap1GAPドメインをもつSPAL3は、線維芽細胞に強制発現させると細胞の形態が著しく伸長し、上皮細胞株に強制発現させると、上皮細胞接着構造の形成過程の遅延が認められたことから、SPAL3がアクチン線維形成を介して細胞接着過程の制御に関与することが示唆された。また、本研究において、トリセルラージャンクションに濃縮する新規膜タンパク質TRCXを同定することに成功し、TRCXが上皮細胞シートのバリア機能に関与することを明らかにした。トリセルラージャンクションは上皮細胞接着構造の中でもまた解析が進んでいない新しい分野であり、本成果が今後のトリセルラージャンクションの形成と生理機能の分子機構の解明に寄与することが期待される。
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