配分額 *注記 |
16,850千円 (直接経費: 15,200千円、間接経費: 1,650千円)
2007年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
2006年度: 9,700千円 (直接経費: 9,700千円)
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研究概要 |
今回の研究期間内の成果としては次のような内容が挙げられる。まず赤血球の免疫介在性溶血の機序解明のために、自己抗体の認識抗原として最も多いとされているバンド3およびグライコフォリンについて、その変異と膜上の発現との関連性(Ito D, et al. 2006)および遺伝子クローニング(Sato K, et al. 2008)を行った。Band3とmacrocomplexを形成している蛋白で、赤血球の貪食抑制に関与していると考えられるCD47抗原については、まず犬でのcDNAクローニングを行った(Shiozaki Y, et al.)。さらにフローサイトメトリー法を用いて、健常なビーグル犬の末梢血液中の赤血球、白血球におけるCD47発現を測定するとともに、犬のIMHA症例のCD47分子の発現について検討を行った。その結果CD47分子の顕著な発現低下は認められなかったものの、赤血球再生像によってCD47分子の発現が変化することが示唆された。犬の赤血球を一定期間低温保存することによる、CD47分子の発現量変化を観察したところ、保存前と保存2週間後では赤血球の浸透圧脆弱性が亢進するとともに、CD47分子の発現量が低下することが判明し、保存赤血球の障害発現に関与している可能性が示唆された。 P糖蛋白は薬剤耐性(薬剤挑出)に関与する分子であるが、P糖蛋白の発現量と補体介在性の細胞溶解には関連性があることが示唆されているため、犬におけるP糖蛋白の基礎研究としてP糖蛋白をコードするmdr1遺伝子の導入実験を行う(Matsuura S, et al. 2007)とともに、犬の疾患時のP糖蛋白の発現解析を行った(Kitamura Y, et al. 2008)。膜蛋白だけでなく、犬の免疫介在性血球減少症の病態解明のために、臨床例を用いた、臨床病理学的検討および予後予測因子の検討とスコアリングシステムの開発を行った(Nakamura M, et al., 2008, Ishihara Y, et al.) 今回の研究では、免疫介在性血液疾患の新規治療法の開発まではたどり着けなかったが、一連の基礎研究で得た情報は極めて貴重であり、今後の犬および猫の免疫介在性血液疾患の病態解明と、新規治療法開発に非常に役立つものであると考えられた。
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