研究課題
基盤研究(B)
平成18年度にはTRPC5が一酸化窒素(NO)や活性酸素を感知、活性化開口し、Ca^<2+>を流入させることを示した。また、TRPC5は血管内皮細胞の形質膜陥入構造カベオラにおいて、内皮型の一酸化窒素産生酵素eNOSと機能的複合体を形成し、内皮細胞におけるNO産生のpositive feedback Ioopを制御することがわかった。TRPM2活性化機構解明にあたり様々なストレス応答シグナルに着目したところ、我々はextracellular signal-regulated kinase(ERK)がTRPM2活性化に重要な役割を果たしていることをつきとめた。また生理的役割についてはTRPM2発現が認められている単球細胞株U937を用いてH_2O_2によるIL-8産生誘導にTRPM2を介したCa^<2+>流入が関与することを明らかにした。平成19年度には、活性酸素に応答した単球のケモカイン(chemokine)IL-8産生、及びそのIL-8による炎症部位での好中球の遊走における役割の解明を行った。第一に、H2O2が惹起するCa^<2+>流入にTRPM2が関与を、特異的なsiRNAをヒト単球細胞株U937に適用し、Ca^<2+>測光法及びパッチクランプ法イオン電流測定により明らかにした。同様の方法で、TRPM2を介して流入したCa^<2+>の作用点としてPyk2キナーゼを同定した。Pyk2はRASを介してERKまでの経路を活性化する。第二に、ERK活性化から下流の転写因子NF-kBを介したIL-8の転写活性化までの経路における、TRPM2の重要性について示した。第三に、TRPM2シグナル経路の「生体内」における意義を確立するために、既に作出してあるTRPM2ノックアウトマウスより単球を単離し、TRPM2を介したCa^<2+>流入がマウスケモカインMIP-2の産生を制御することを示した。また、炎症部位への好中球の化学遊走(chemotaxsis)へのTRPM2の関与が示唆された。TRPM2が細胞死かそれ以外の下流生理応答かの選択をする際に働く分子機構の解明も行った。若年性ミオトニー癲癇原因遺伝子EFHCIとTRPM2との間の分子間相互作用を、組み換え発現系を用いた共免疫沈降法、及びin vitro結合により示した。TRPM2チャネルを発現させたHEK細胞にさらにEFHC1を共発現させ、Ca^<2+>測光法及びパッチクランプにより調べることにより、TRPM2活性に増強を見出した。また、HEK細胞に細胞死を惹起することも明らかにした。
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