研究課題
基盤研究(B)
EBV溶解感染を誘導すると宿主細胞内ではEBVゲノムは100倍から1000倍増幅複製される。このウイルスDNA合成を宿主細胞はDNA損傷即ち異常DNAとみなしATM依存的DNA損傷チェックポイント経路を活性化することを明らかにしてきた。しかしATM依存的DNA損傷チェックポイント経路の活性化はp53の活性化をおこすが、p53及びp53の下流のp21、MDM2の発現量の増加はなく、p53の下流の経路は活性化されていなかった。これはウイルスBZLF1蛋白質がp53をユビキチン化しプロテアソーム依存的に分解することで細胞周期停止や細胞死の誘導をおさえていることがわかった。EBV感染細胞内において、p53は潜伏感染期ではMDM2によって制御されるのに対し、溶解感染期では、MDM2とは別の機構、BZLF1蛋白質自身にはユビキチン活性は無いことから、おそらくBZLF1蛋白質に付随したE3リガーゼ複合体によって制御されていることが明らかとなった。またこれまでEBV溶解感染を誘導した細胞はS期様環境を維持したまま宿主DNA複製が抑制され細胞周期停止を引き起こすことを明らかにしてきた。その分子機構の一つの機序として溶解感染を誘導すると染色体複製開始及び複製伸長に関与するMCM複合体のリン酸化(特にMCM4)がおきることがわかった。MCM4-6-7から構成される6量体の持つDNAヘリカーゼ活性はBGLF4蛋白質共存在化では著しく抑制されることから、EBV溶解感染期にはCDK2およびBGLF4蛋白質がMCM複合体をリン酸化しMCM複合体のヘリカーゼ活性を不活化することが、宿旋染色体DNAの再複製開始および複製伸長を阻害する一つの機構であることが示唆された。
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