研究課題
基盤研究(B)
神経変性疾患は、異常な高次構造をとる疾患タンパクが細胞内外に凝集し、正常な細胞タンパクの機能的あるいは量的な阻害を生じさせることで、発症につな。遺伝性脊髄小脳変性症、ハンチントン病など9種類以上の変性疾患を含む疾患グループである"ポリグルタミン病"においては、核に疾患タンパクが移行することが病態の上で必須であることがこれまでに分かっている。従って如何なる核タンパクの機能的・量的異常が起きているかを解析することが病態解明の重要な鍵となることが期待される。そこで、私たちは、ポリグルタミン病疾患タンパクを発現する神経細胞における可溶性核タンパクの変化を、網羅的にプロテオーム解析した。その結果、複数のポリグルタミン病に共通して、核内可溶性HMGBタンパクが減少することが明らかになった。HMGBタンパクはゲノムDNAの高次構造変換に必須であり、従って、DNA組み替え、損傷修復、転写などの核機能の上で重要な役割を果たしている。私たちは、ポリグルタミン病態における核内可溶性HMGBタンパク減少が、DNA損傷シグナルの増加と転写機能低下につながることを示すとともに、ショウジョウバエモデルにおいてHMGBタンパク量の回復が変性抑制につながることも明らかにした。以上の成果から、私たちはポリグルタミン病における新たな病態としてDNA損傷修復機能低下を提唱した。DNA損傷修復タンパクの遺伝子異常が早老症候群の原因であることを考え合わせると、ポリグルタミン病態は異常タンパク蓄積に引き続く二次的な老化促進とも考えられる。
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