研究課題
基盤研究(B)
多臓器生物であるヒトにおける全身での代謝調節には、多くの臓器が協調的に関与しているものと想定され、そのためには臓器間の代謝情報のやり取りが必要であると考えられる。そこで、一つの臓器に遺伝子導入を行いその臓器で急牲に代謝を変化させることにより、他の臓器・組織の代謝に与える影響を検討することにより、臓器間の代謝情報ネットワークの解明を試みた。脂肪肝の際に肝臓での発現亢進が認められるPPARγ2を肝に過剰発現させる実験により、肝臓からの求心性神経シグナルが、糖代謝・エネルギー代謝に重要な役割を果たしていることを見出した(Science2006)。詳細な検討により、肝臓からの迷走神経求心路および交感神経遠心路が基礎代謝や脂肪分解の全身における調節に重要な役割を果たしていることを示した。この自律神経系ネットーワークは、過栄養時に基礎代謝を亢進させ肥満を予防するフィードバック機構として機能していると想定された。さらに、自律神経求心路を介して、脳が肝臓での代謝に関する情報を受け、末梢臓器に各臓器を統合した協調的代謝に向けての指令を出している、つまり、脳が全身の代謝調節における管制塔の役割をしているというモデルを提唱した(Circ Res2007)。さらに、この経路は、肥満の際の血圧上昇など、メタボリックシンドロームの病態にも関与していることを示唆する結果を得つつある。このように、臓器間代謝情報ネットワークのさらなる検討は、個体における恒常性の維持機構の解明に加え、メタボリックシンドロームの病態の理解にもつながるものと期待される。
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