研究課題
基盤研究(B)
1 脊髄損傷後の遺伝子発現変化の解析全切断したラット脊髄で発現する遺伝子についてDNAアレイ解析を行った。3倍以上に発現上昇した遺伝子は46個で炎症サイトカインやリンホカインが含まれ、半分以下に低下した遺伝子は18個でイオントランスポーターやアミノ酸トランスポーターなどであった。p75^<NTR>シグナルとの関連でいくつかの遺伝子に注目し発現変化や分布の解析を行った。2 p75NTRによる負のシグナルを抑制するペプチドの活性評価a)RhoGDIとp75の結合を阻害するペプチド及び、b)ソーチリンとプロBDNFの結合を阻害するペプチドを半切断したラット脊髄に直接投与したが運動機能の回復効果は認めなかった。脊髄損傷患部には多くのタンパク質分解酵素が誘導されており、ペプチドが分解されやすいこと、分子間阻害活性が弱いことなどの理由が考えられた。3 p75NTR遺伝子改変動物における脊髄損傷修復p75NTRの働きは神経再生に不利益なのか確かめるため、p75NTR-遺伝子KO マウスと野生型マウスの半切断脊髄損傷後の運動機能の回復を比較した。手術8日後まではKO マウスの方が高い運動機能回復を示したがその後は差が認められなかった。この結果より、損傷修復初期にp75NTRが修復を妨げることが判明した。4 発現調節型p75NTRトランスジェニックマウス(Tg)の開発loxp遺伝子間に停止コドンを配置し、下流にp75NTR遺伝子を連結したベクターを構築し、理化学研 発生・再生科学総合研究センターに委託してTgマウスを作製した。約30%の個体にDNAが導入されたが、loxp間の停止コドンを除去しない限りp75NTR遺伝子は発現しないので、個体の維持が容易である。部位特異的にCre酵素遺伝子を発現するTgマウスと交配すると部位特異的にp75NTR発現を促進でき、今後のp75NTR研究の有用な武器となる。
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