研究課題
基盤研究(B)
COX-2遺伝子のプロモーター領域の塩基配列がグアニンからシトシンへ変異している(-765G->C)と、PGE2の産生低下に伴い心筋梗塞や脳血管障害の頻度が低下すると報告されている。これまでわれわれはPGE2は脳や脊髄の神経可塑性に関与し過活動膀胱の発生に重要であると報告してきた。したがってこの遺伝子多型が存在するとBPHや脳血管障害があっても過活動膀胱が発生しない可能性がある。そこで脳血管障害、脊髄疾患、前立腺肥大症の患者で、過活動膀胱の有無により2群にわけ、それぞれの患者ゲノムDNAサンプルを集め多型の決定を行った。また尿を採取しPGE2の測定を行った。1,前立腺肥大症のPGE2濃度はコントロールに比べ有意に高値であった。2,脳血管障害で症状スコアが高い患者の尿中PGE2の濃度は高値であった。3,脳梗塞による過活動膀胱モデルに対しCOX阻害薬を投与すると用量依存性に膀胱容量の増加がみられた。この増加は膀胱知覚神経C線維を介していることが解明された。4,脳血管障害、脊髄損傷、前立腺肥大症を有し、下部尿路症状を訴える70症例の尿を採取し、各種PGやGHを測定した。またゲノムDNAサンプルを集めCOX-2遺伝子多型の有無について解析した。その結果は2008NBSにて報告予定であるが、遺伝子多型は3例と少なくもう少し症例を積み重ねる必要があると考えられた。膀胱伸展に伴い膀胱粘膜で産生されるPGE2が膀胱知覚神経を刺激して過活動膀胱をもたらしている可能性を示唆している。下部尿路閉塞のない脳血管障害の患者でも、尿中PGE2濃度が症状の重症度に相関して上昇していた。尿路上皮の伸展や虚血が尿中PGE2の産生亢進をもたらすと報告されているが、それ以外のファクターが尿中PGE2濃度を高めている可能性がある。
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