研究課題
基盤研究(B)
TGF-βに誘導されるEMT(上皮間葉移行)のメカニズムを検討するに当たり、複数種の細胞株を用いてTGF-βによるEMTを比較検討し、最も誘導が強かったNMuMG細胞を用いた。評価系は上皮系の代表的マーカーであるE-cadherinと間葉系のマーカーであるN-cadherinやfibronectinの発現変化とし、分子生物学的に解析を行った。E-cadherinは上皮細胞の代表的な接着分子であり、EMT獲得に伴いその発現が抑制されることから、EMTの代表的な指標の1つとなっている。これまでにE-cadherinは転写調節での解析が多くなされ、主だったものとして、Znフィンガー型転写因子であるSnail/SlugやδEF1ファミリー、bHLH(basic helix-loop-helix)型転写因子であるE2A、Twistなどが挙げられる。これら因子の発現を経時的に解析したところ、δEF1(delta-crystallin/E2-box factor 1)ファミリーに属する2つの転写因子(SIP1/ZEB1)のみがE-cadherinの発現低下と逆相関していることを見出した。そこで、これらを過剰発現させるとE-cadherinの発現が低下し、さらにSiRNAでノックダウンさせるとTGF-βによるE-cadherinの抑制が解除された。一方でfibronectinやN-cadherinなどの間葉マーカーの発現には全く影響が認められなかった。したがって、TGF-βのEMT時におけるE-cadherinの制御はδEF1が深く関与することが明らかとなった。またEMTで最も重要な因子とされるSnailはTGF-βによって発現が速やかに上昇されるが、Snailのノックダウン細胞でもTGF-βによるEMTが認められることから、Snailの関与は低く、現在も解析を進めている。
すべて 2007
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