研究概要 |
本研究は,繊維強化型複合歯科材料およびこれと併用する間接修復用コンポジットが摩耗する原因を究明し,素材,重合方法,技工術式,臨床術式等に検討を加えることによって耐摩耗性の改善を図り,より高性能の補綴装置を臨床の場に供することを目的としている. 本研究では試作された繊維強化型複合材料,接着用プライマー,接着材,歯科用合金を実験材料として使用した.摩耗試験では2種類の試験機を採用した.試料はコンポジット硬化物単体および異種材料とコンポジットあるいは繊維との複合体として製作された.異種材料界面には接着用プライマーと接着材が使用された.繊維強化型複合材料および間接修復用コンポジットの耐摩耗性改善を目的として以下の項目を検討した. 1.繊維強化型複合材料および間接修復用コンポジットについては重合条件,特に光照射時間,重合温度,表面の仕上げ研磨方法などが耐摩耗性に及ぼす影響について検討した.本年度は試料表面が粗いと対合材料の摩耗が顕著であることを明らかにした. 2.重合器から照射されるエネルギーを分光放射照度計で測定し,光線の波長とエネルギーの分布が材料の重合状態に及ぼす影響を検討した.メタルハライド光源を有する1機種は従来の重合器に比してはるかに大きい光エネルギーを発生することが明らかになった. 3.試作繊維強化型複合材料の耐摩耗性について検討した.摩耗面は繊維配列方向の影響が大きく,繊維の配置に考慮が必要であることが示唆された. 4.異種材料の界面における破折,摩耗の原因の追求とそれらを防止するための方法を2種類の摩耗試験機を用いて検討した.材料界面には接着材,プライマーを使用し,未使用の場合と比較を行った.接着促進モノマーの使用により異種材料界面の剥離が低減できることが明らかになった. 本研究により,適切な条件下において繊維強化型複合歯科材料の耐摩耗性を改善できることを明らかにした.
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