研究概要 |
大規模データを「乱択(ランダムサンプリング)の手段を用い手際良く」「データの構造を保ちつつ」「要約する」という、乱択による情報構造要約アプローチの主要な例である「疎フーリエ表現サンプリングアルゴリズム」に焦点を当てた.これは巨大な信号からの少ないサンプリングで主要フーリエ係数を特定し得る手法で,マルチメディアデータの要約に応用が期待される.本研究では、主としてその実装に基づく性能解析を行った.特に,各種プログラムパラメータを理論上の性能保障が得られる値よりも計算量が削減される側(危険側)に設定し,種々のテストデータにこれを適用することで,同アルゴリズムがどのようなパラメータ・データに対して余裕をもっているか,あるいは限界動作しているか,の実験的調査を行った.ワークステーション上でGP/PARI言語を用いた実装で実行時間,主要周波数同定の成功確率,フーリエ係数の精度を評価した.その結果,(a)従来法のディジタルフィルタを同一次数のより周波数選択性に優れるフィルタに変更することで,小さい計算量の犠牲のもと主要周波数同定処理の成功確率を15ポイント向上できる例が存在した.(b)同処理において,計算資源を,「信号分割数」「フィルタ次数」に振り分けることを考えた場合,まずは「信号分割数」を増やすことが成功確率向上に寄与する.(c)同アルゴリズムは,単一の主要周波数に,多数の周波数成分からなるノイズが加えられた信号に対して比較的余裕をもって動作する.一方,比較的近接した大きさの周波数成分から主要なものを抽出する場合は限界的動作となる.(d)主要フーリエ係数同定処理に比較し,(要求精度5パーセント程度の条件では)フーリエ係数推定処理の占める計算量は僅かである,といった,本格的にマルチメディアデータ要約へ応用する場合の実装上のポイントを得ることができた.
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