研究概要 |
書字用紙の数枚下に重なっていた用紙に形成された浅い筆圧痕を検出する装置として,ESDA2がある.これは筆圧による用紙の厚さ変化に基づく帯電量の違いを利用して,トナーの付着密度の高低差で筆圧痕パターンを出力する装置であるが,高感度ゆえに用紙数枚にわたる書字の多重筆圧痕を検出してしまい判読しづらいという問題がある.また,背景部分に付着するトナーも多く,そのまま上下間の用紙の検出パターン間で差分をとっても,この多重筆圧痕からうまく1枚の用紙分の筆圧痕文字が分離できないことがわかった.そこでまず,上下用紙の検出パターン画像に濃度レベルによる2値化を行った.次に,2値画像上の黒画素密度の高いところを黒,低いところを白にする処理を行なった.そして,膨張収縮処理を行って孤立した黒画素を減らした後に,両画像間の差分をとった.引く側と引かれる側の画像に共通して存在する黒画素(濃度値=1)については,減算により取り去れた.引く側の画像のみに黒画素(濃度値=1)が存在する位置については,減算により濃度値が負(-1)になればそれを0(白画素)に置換することにより取り去れ,最終的に引かれる側の画像の黒画素のみが残り,画質は良くないものの判読可能な文字も得られた. また,斜光線照明により筆圧痕エッジの影を捉える可視化法では,光軸に平行な方向成分の筆圧痕線が捉えられず,種々の方向成分を持つ文字群を完全な形態で可視化することがこれまで不可能とされていたが,本研究ではそれを実現する方法についても検討を加えた.その結果,方向の異なる斜光線照明により撮影した複数枚の画像群を,画像乗算により多重に重ね合わせることにより,1枚の画像上に判読容易な文字パターンを再現することができた.用紙の波打ちや照度分布に起因する背景濃度のむらについても,原画像の局所領域の濃度平均値を一致させる処理を施すことにより解消することができた.
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